お知らせ

相続法の改正(2)~自筆の遺言書について(遺言書保管制度について)

2020年7月10日から、自筆の遺言書を法務局に預けておくことができる制度が始まっています(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。

 

これまでは、自筆で書いた遺言書は、金庫や仏壇にしまっておくなど、遺言者自身が保管する必要がありました。この制度は、その保管を法務局がやってくれるというものです。具体的な制度の内容は次のようなものです。

 

ア 遺言書を法務局に保管してもらえる

 

まさにこの制度の目的です。

 

遺言者は、住所地、本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局に保管を申請します(法4条)。事前の予約が必要です。

(管轄の法務局を調べるにはhttp://www.moj.go.jp/content/001322714.pdf

 

申請には、遺言者本人が法務局におもむく必要があります(法4条6項)。本人の意思によることが大切なため、第三者に託すことは認められていません。

 

申請に必要な書類は、①遺言書(ホッチキス止めはしない)、②申請書、③本籍の記載のある住民票、④本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証等)です。

(申請書の書式はhttp://www.moj.go.jp/content/001321933.pdf

 

手数料は1通3900円です。

 

申請が受け付けられますと、保管証が発行されます。ご家族や遺贈する相手の方に遺言書が保管されていることを伝える場合には、保管証に記載された保管番号も一緒に伝えておくとよいでしょう。後にそれらの方が閲覧などする場合に便利です。

 

当然のことですが、遺言書を書き換えたい場合などには、一度預けた遺言書を返還してもらうこともできます(法8条)。

 

イ 遺言者の死後、遺言書の内容の証明書をもらえる

 

遺言者が亡くなった後、相続人は、遺言書の内容の証明書(「遺言書情報証明書」)を交付してもらうことができます(法9条1項)。閲覧のみも可能です(法9条3項)。

(イメージはhttp://www.moj.go.jp/content/001318731.pdf

 

また、遺言書情報証明書が相続人の一人に交付された場合には、他の相続人に対し、遺言書が保管されている事実が通知されることとなっています(法9条5項)。

これにより、一部の相続人だけにしか遺言書の内容が知らされない、という事態が防止されますね。

 

なお、相続人のほか、遺言書に記載されている受遺者や遺言執行者も、この遺言書情報証明書の取得や遺言書の閲覧ができますし、また、上記通知も受けることとなっています。

 

ウ 遺言書が預けられているか確認できる

 

遺言者が亡くなった後、相続人、受遺者、遺言執行者等は、法務局に遺言書が保管されているかどうかだけを確認することもできます(法10条)。

(イメージはhttp://www.moj.go.jp/content/001318732.pdf

 

エ 家庭裁判所の検認は不要

 

自筆の遺言書は、家庭裁判所の検認を受けなければならないのが原則です(民法1004条)。しかし、法務局で保管されている自筆の遺言書については、検認が不要とされています(法11条)。

 

以上がこの制度の概要です。

 

自筆の遺言書を法務局が保管してくれれば、たとえば、相続人が遺言書の存在に気付かずに遺産を分割してしまうことや、先に遺言書を見つけた相続人が悪意をもって隠してしまうなどの不都合を防ぐことができそうです。

公正証書による遺言書を作成することに比べて、手続が比較的簡単で、かつ費用も安いため、これから多く利用されるようになると思います。