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子どもが使ったクレジットカード

クレジットカードをめぐるトラブルが増えています。現金を持ち歩かなくても、世界中どこでも商品を購入でき、またサービスを受けることができる、というのが以前からの利点でしたが、最近はインターネット取引にも欠かせませんね。ただ、便利さの裏には常に落とし穴があるもの。特にインターネット取引で使う場合、いずれもカードに書かれている情報(カード番号、名前、有効期限、セキュリティーコード)を入力すれば足りてしまいます。つまり、それらの情報さえあれば、誰だって成りすましてネットで買えてしまうのです。

山口さんちのツトムくんは20歳になったばかり。スマホで内緒なサイトを見ているうちに、ここから先に進むにはお金を払わなければならないことになりました。でも、自分にはお金がありません。そこで、思いついたのは・・・。

ツトム「お父さん、ちょっとクレジットカード見せてよ。」
父「え、何をするんだ。」
ツトム「別に。ただ見てみたいだけなんだよ。」

 ここでお父さんはツトムくんにカードを渡します。ツトムくんは「ふーん」と眺めてお父さんに返しました。お父さんはカードをタンスの中へ。しかし、お父さんがどこにしまうかを、ツトムくんはしっかりと見届けていました。
深夜、お父さんが深い眠りについたことを確認したツトムくんは、密かにタンスに忍び寄り、カードを取り出しました。そして、スマホのサイトにアクセスし、カード番号、お父さんの名前などを入力していきました。ここでもやはり暗証番号は求められませんでした。
ツトムくんの好奇心の代償は、〆て290万円! 翌月、カード会社からの請求を見たときのお父さんの驚愕は察するに余りあります。

カード会社から裁判を起こされたお父さんは、「使ったのは自分じゃない。息子だ」と反論しますが、カード会社の約款には、「家族による盗難等による不正利用については、お支払いいただきます」と書かれています。どうしましょうか。皆さんなら諦(あきら)めますか。
裁判所の結論は、お父さんは支払わなくてよい、というものでした。裁判所は、家族による不正利用であっても、会員(=お父さん)に重過失がない限り、支払を免れると判示し、山口さんのお父さんに重過失があったとはいえないとしたのです。カード会社がコスト増を避けるために暗証番号を入力するようなシステムを構築しなかった責任も、裁判所は考慮したのでした。

この判決はカードの利用者を救済しましたが、最近のカードの不正利用をめぐる裁判例をみますと、利用者に厳しい判決も少なくありません。普段からカードの管理には細心の注意を払うことと、毎月の明細はきちんとチェックして、不正利用と思われるものがあれば、直ちにカード会社に連絡することがポイントです(長崎地方裁判所佐世保支部平成20年4月24日判決)。