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赤ふん裁判狂想曲

正直ずいぶん悩みました。こんなお話を公式ウェブサイトでしてしまってよいのかどうか。不快に思う方もいらっしゃるのでは・・・。そればかりか、わが法律事務所の品位を損ねてしまうのでは・・・。ええい、やってしまいましょう。はい、本日のお題は「赤いふんどし」です。
舞台は甲乙小学校のPTA。なかなか元気な小学校で、海開きの日に教職員とPTAの合同企画で、子どもたちを連れて海に行きました。卒業生でもあるMさん(男性)は、かつてPTA会長も務めた重鎮ですが、根っからのお茶目さんで、「赤ふん」一丁になって海水浴。「おいた」が過ぎたか、海から上がると、砂浜で写真撮影中の現役PTA役員のSさん(女性)に近づき、バァーっとばかり両手を挙げました。
事実関係に大きな争いはありませんが、まず、Sさんの言い分を聞いてみましょう。
「M氏は、ほとんど素っ裸のまま、ものすごい勢いで私のところに走ってきて、私の目の前で「赤ふん」一枚で肉体を誇示するポーズをとったのです。だいたい今の時代、「赤ふん」なんてあり得ないでしょう。M氏は、私の女性としての尊厳を深く傷つけたのであり、断じて許すわけにはいきません。」
それでは、Mさんの言い分をどうぞ。
「私は、甲乙小のプール開きの日には、日本文化を教えるために毎年「赤ふん」で登場していたのです。ですから、私としては、いつも通りだったんですよ。また、Sさんに肉体を誇示したつもりはありません。第一、周りにはたくさんの人がいたのですから。Sさんが写真を撮っていたので、ちょっとポーズをとっただけです。」
むむむ・・・。水も滴る「赤ふん」姿で両腕を挙げるMさん。その姿態は皆さんの想像に委ねるほかありませんが、この「赤ふん」訴訟を審理することになった若き裁判官は、判決の執筆にことのほか力が入ったようです。
まず、「行為が行われた状況、目的、態様、原告に与えた不快の程度等の諸事情を総合的に考慮して、その行為が社会通念上許容される限度を超えるものと認められるときは、性的な自己決定権、人格権の侵害に当たり、違法性を有するものというべきである」と一般論を披瀝した上で、詳細に事実認定をして、Sさんの訴えを退けました。
どうやって計ったのかわかりませんが、海岸線からSさんの立ち位置まで約54mで、それを36秒で移動したと推定し、移動の平均速度は秒速約1.5mであるから、「早歩きした場合なら、その程度の速さで移動することも不可能とはいえない」と認定。「ものすごい勢いで走ってきた」とはいえないとしました。
また、他にも露出度の高い競泳水着を着用していた男性教諭もいたことや、白昼、多数の子どもたちも周囲にいたという状況、Sさんが撮影した写真を見る限り、MさんはSさんの方向を見ていなかったことなどを認定し、Mさんに肉体を誇示する意図があったとは認められないと認定しました。
ただでさえ、人間関係に悩み多きPTA。「赤ふん」はやめておいた方がよさそうです(東京地方裁判所平成26年12月25日判決。若干脚色してあります)。