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「パチンコ必勝法」にだまされて~消費者契約法

 パチンコ大好きのAさんが、お店から出てきました。「ちぇっ。今日はツイてないなあ。2万円も負けちゃったよ…。」 苦虫を噛みつぶしたような様子で横丁の本屋に立ち寄ると、突然『パチンコ攻略』の文字が目に飛び込んできました。見ると、「あなたも勝ち組100%確定!」、「パチンコで月収100万円も夢じゃない!」なんて書いてあります。
 思わずその雑誌を買ったAさん。帰宅して読んでみると、要するに、お金を払うと確実にパチンコで勝てる方法を教えてくれるという話でした。そんなことってあるんでしょうか。Aさんは、早速、その業者に電話をかけてみました。
Aさん「マジで絶対勝てるんですか?」
業者「ええ、ええ、もちろんですよ。ウチが教える台で、ウチが教える方法で打ってもらえれば、絶対勝ちます。まあ、お店に2時間いれば5万円は勝てます。簡単な方法なんで、誰でもできますよ。」
Aさん「ちょっとだけでも、教えてもらえませんか。」
業者「40万円を払ってくれたら、ばっちり指導しますよ。儲(もう)かりだしたら40万円なんて、あっという間にモトが取れますよ。だって、100%勝てるんですから。」
 自信ありげな業者のトークにすっかり参ったAさんは、早速40万円を支払いました。数日後、駅前のパチンコ店で待ち合わせたところ、スーツ姿の男が現れました。男は耳元で、「12番の台に座って、こうやってください」とささやきます。Aさんはそのとおりやってみるのですが、全然当たりません。
Aさん「おかしいですよ。」
男「じゃあ、スペシャルコースにしますか。あと20万円払ってもらえれば、スペシャルコースを伝授します。」
 Aさんは追加で20万円を支払って、スペシャルコースなるものを教えてもらいましたが、もちろん全然ダメ。ようやく騙(だま)されたことに気づいたAさんは、業者に60万円の返還を求める裁判を起こしました。
 ここで争点になったのは、消費者契約法が禁止している断定的判断の提供でした。業者は消費者に対し、本当は偶然によって左右されるのに、あたかも100%利益になるなんて断定的なことを言って勧誘してはダメというルールです。
 ところが、第1審はAさんの請求を棄却します。裁判官は「Aさんはギャンブルの利益を求めて取引したんでしょう。そんなの消費者保護の対象になりませんよ」と言うのです。これに対し、控訴審は一転して業者の敗訴を言い渡します。「確かに、Aさんの行動は誉められたものではないかもしれないが、そもそも業者が言葉巧みに煽(あお)ったからでしょう。業者に返還を命じても消費者保護の精神に反するわけではない」と判示しました。どちらの判決に共感しますか?
 さて、「私は絶対騙されない」と自信満々のあなた。実は耳寄りな話があるんです。100%裁判で勝てる方法、前金40万円で教えて差し上げましょうか? スペシャルコースもございますよ!😜(東京簡易裁判所平成17年5月9日判決、東京地方裁判所平成17年11月8日判決。若干脚色してあります)。