お知らせ

母が知れないということ~就籍許可

児童養護施設の施設長さんからの相談です。
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実は、うちの学園に無戸籍の子がいるんです。サトシっていうんですがね。元々、アンジェラっていうフィリピン人女性と、その夫である日本人男性との間の子として届け出られたらしいんですが、夫が『俺の子じゃない』って主張して裁判やって認められたらしいんです。それで、サトシの戸籍は消えてしまったんです。
当時、アンジェラは別の日本人男性と住んでいたんですが、サトシを置いていなくなってしまったそうです。その後、調べたところ、アンジェラは出国してしまい、今は消息不明です。男性は、サトシの面倒を見切れないということで、うちの学園が預かることになったんです。
母親がフィリピン人だっていうことで、サトシにフィリピン国籍を得させようと、フィリピン大使館にも行ってみました。ところが、大使館は、母親がフィリピン人だっていうことを、パスポートとか出生証明書などで確認できないと受け付けないっていうんです。母親はいなくなってしまいましたから、無理ですよね。再三話をしましたが、ダメでした。
母親がフィリピン人だって言いましたが、実は、母親は「私はアンジェラじゃない。パスポートは偽物だ」と言っていたらしいんです。いずれにしても、もういなくなってしまったんで、確認のしようがありません。また、サトシを連れてきた男性によれば、サトシは、また別の日本人男性の子だっていうんですが、これも特定のしようがありません。
役所にも相談したんですが、「母がフィリピン人なら、フィリピン国籍をとればいい。」の一点張りです。サトシも、もう小学3年生。宙ぶらりんな状態に、これ以上置いておくのは忍びないです。サトシは日本で育っていて、日本語以外知りません。何とかしてやれませんか。
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国籍法では、①日本で生まれたけれど、②父母がともにわからない場合には、日本国籍が与えられるとしています。サトシの場合、父がわからないのは明らかですが、母については微妙ですね。「アンジェラ」は、パスポートは偽造だと言っていたようですが、あくまで言っているだけで、客観的な証拠があるわけではありません。フィリピン人であるアンジェラが母である可能性が高いという見方もできるでしょう。
しかし、裁判所は、フィリピン大使館がフィリピン国籍の付与を認めないこと、サトシが約9年間も日本で生活し、日本で生きていくほか術がないことを考慮し、母を確認することができないと判断。結局、父も母もわからないと認定し、サトシの日本国籍を認めました(横浜家裁平成15年9月18日審判)。
無戸籍・無国籍が社会問題になっていますが、サトシのような境遇の子どもには、ぜひ日本国籍を与えてあげたいところです。ちなみに、申立ては、施設長さんがすることができます(児童福祉法47条1項)。