法律情報コラム(個人)

相続税の基礎控除

※本文中に引用する法律は断りがない限り相続税法

相続税に関して、最初に押さえておくべきポイントは、「基礎控除」の仕組みです。基礎控除の結果、相続税がかからなければ、相続に関する悩み事の一つが解消するわけですから、相続人の方々にとっては重要なことですね。

相続税の基礎控除というのは、すぐ後に述べます「課税価格の合計額」のうち、それを超える部分にのみ相続税がかかり、それ以下であれば相続税はかからないというラインを設定するものです。

そこでまず、「課税価格の合計額」ですが、これには相続した財産の金額が含まれるだけでなく、いわゆる「みなし相続財産」である生命保険金や退職金(ただし非課税枠があります)などのほか(法3Ⅰ)、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産の価額(法19Ⅰ)、生前贈与ではあるものの相続時に課税される制度を利用した財産の価額や(法21の15Ⅰ)なども含まれます。他方で、債務及び葬儀費用の金額は除かれます(法13)。

そうして求めた課税価格の合計額から、基礎控除の金額を差し引きするのですが、基礎控除の金額は次の計算式で求めます。
「3000万円+600万円×相続人の数」(相続税法15Ⅰ)

たとえば、相続人が妻と子2人の合計3人というケースであれば、基礎控除額は3000万円+600万円×3人=4800万円となります。

つまり、課税価格の合計額が4800万円を超えていれば課税あり、以下であれば課税なし、となるわけです。

なお、基礎控除額の計算にあたっては、相続人が相続放棄したり、相続人の中に養子がいたりする場合は注意が必要です。

まず、相続放棄をした相続人がいる場合ですが、基礎控除の計算上は、相続放棄がなかったものとして相続人の数を数えます(法15Ⅱ)。

たとえば、相続人である妻と子のうち、妻が相続放棄すると、子1人が相続人となりますが、相続人の数は2人と数えます。

さらに、その子も相続放棄した場合、次の順位の被相続人の5人の兄弟姉妹(ケイテイシマイと読みます)が相続人となります。この場合も5人とは数えず、2人のままと考えるわけです。

次に、被相続人に養子が複数人いる場合を考えてみましょう。

その場合、必ずしも養子全員が「相続人の数」に含まれるわけではありません。まず、養子の他に実子がいれば、養子は何人いても1人しかカウントされませんし、実子がいなくても、カウントされる養子の数は2人までです(相法15Ⅱ)。なお、特別養子、連れ子養子などは実子とみなされて計算されます(相法15Ⅲ)。

以上の説明はあくまで概略ですので、相続税がかかりそうかどうかを大雑把に判断する際の参考にしてください。詳細はあくまで税理士さんにご相談ください。税理士さんのお知り合いがいない場合には当事務所でご紹介することも可能です。