法律情報コラム(個人)

普通預金と定期預金がある場合の預金払戻しのあり方

 亡くなった方の預貯金について,例えばA銀行の普通預金に300万円,定期預金として1200万円が相続開始時に存在していた場合,A銀行からトータルとして150万円までしか引き出せませんが(法務省例で定めた金融機関ごとの上限額),A銀行の普通預金から150万円を引き出すことが可能なのでしょうか。
 預貯金は,一般には現金とほぼ同じに扱われますが,法的には預貯金債権という債権を銀行に対して保有している状態で,払戻しは預貯金債権の弁済となります。そして,平成30年改正では,この預貯金債権の「債権額」の3分の1に,払戻しを受ける共同相続人の法定相続分を乗じた金額を上限額として定めましたので,預貯金ごとに,上限額が決まることになります。
 上記事例で,法定相続分が2分の1の相続人が引き出そうとする場合には,300万円の3分の1の100万円の2分の1である50万円までを普通預金から引き出すことが可能になりますが,A金融機関との間で上限金額である150万円を,普通預金から一括して引き出すことはできません。