法律情報コラム(個人)

配偶者居住権が成立した建物の登記と裁判

 配偶者居住権が認められると,配偶者は,当該居住建物に居住し続けることができますが,当該居住建物を相続人から譲渡された第三者,当該居住建物を差し押さえた第三者に対して配偶者居住権を主張するためには登記が必要です(民法1031条2項⇒605条)。
建物賃貸借は当該建物の引き渡し(要は,当該建物に居住していること)によって,賃貸人以外の第三者にも賃借権の存在を主張することができますが,配偶者居住権は登記を具備しなければなりません。つまり,法務局に行って登記申請などの手続きまでが必要です。
登記が必要とされたのは,配偶者居住権が被相続人が亡くなった当時の配偶者の居住実態をもとに認められる権利なので,被相続人が亡くなった前後で建物の利用状況に変化がなく,第三者からは配偶者居住権が成立しているのかどうかは判別しづらいためとされています。
 配偶者居住権を,相続人以外の第三者に対しても存在していると主張する場合は登記が必要ですが,登記申請は登記権利者と登記義務者が共同して申請行為を行わなければなりません。
 配偶者居住権の場合,配偶者居住権が認められた者と,その義務者となる当該居住建物の所有者とが共同して登記申請することになりますが,当該居住建物の所有者が協力してくれない場合(そういう事態は稀と思いますが・・・。),所有者に対して登記に協力するよう裁判を求めることになります。