法律情報コラム(個人)

遺産分割協議(審判)と配偶者居住権

1.相続人間の遺産分割によっても配偶者居住権を認めることは可能です(もちろん、その他の配偶者居住権の要件を具備していることが前提となります。)。
 遺産分割という相続人間の協議が成立しなければ配偶者居住権は成立しないことになりますが、他方で、相続人間の協議が整わない場合、家事審判で遺産分割を可能とする道が残されています。そのため、審判で、すなわち裁判所の決定で、反対する相続人の意思に反して配偶者居住権を認めれば、当該不動産に関して相続人間のさらなる紛争の火種となるのは誰でも想像できるところです。
2.そこで、民法は、遺産分割協議ではなく、遺産分割審判により配偶者居住権を認める場合の要件を別に定めました。
 ①共同相続人間で配偶者に配偶者居住権を認めることについて合意が成立しているとき、②(a)配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望しているときで、(b)居住建物の所有者の不利益の程度を考慮しても、配偶者の生活を維持するために特に必要があるときに限り、配偶者居住権を取得させる遺産分割審判が可能としました。
 ①は、共同相続人間で遺産分割について争いがあっても、配偶者居住権の成立に争いがない場合として、紛争の火種が避けられる場合です。これに対し、②は、配偶者居住権の成立に争いがないとはいえない場合であっても、居住権の趣旨から、配偶者居住権を認める必要性が高いと考えられる場合となります。
3.遺産分割による配偶者居住権の成立においては、相続人間の協議が整うことが前提となっており、協議が整わない場合には一定の要件が加算された家事審判によるとされ、遺言の場合に比べてハードルが高くなっています。