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保険をかけているから、盗まれたって大丈夫?

保険をかけているから、盗まれたって大丈夫。そうお考えだとすれば、少々甘いのでは? 実際、盗まれたという証明は、あなたがしなければなりません。でも、そんな証明、犯人でも検挙されていれば別ですが、そう容易ではありません。

 

Aさんは、時価200万円相当の高級時計が壊れてしまったので、銀座の時計修理店に持って行こうと思い、数日前から紙袋に入れて、自動車の蓋のないコンソールボックスに置いておいたと言います。ところが、その日、取引先での打ち合わせのためにその自動車を運転していると、不運なことに到着直前にエンストしてしまい、JAFに出動要請。バッテリーチャージをしてもらい、エンジンはかかるようになったのですが、JAF係員から「しばらくエンジンをかけっぱなしにしておいた方がいいですよ」と言われ、そのまま自動車を路上駐車して取引先と打ち合わせをしていたそうです。そして3時間ほど経過した午後9時頃、自動車に戻ってみると、時計が無くなっていたというのです。

ところが、裁判所は、そもそも本当に盗まれたかどうか疑わしいと判断し、保険金の支払請求を認めませんでした。その理由としては、①JAF係員も、バッテリーチャージを手伝ってくれた取引先の社員も、車内に紙袋を見ていないこと、②Aさん自身、その日、盗まれたという時刻まで、本当に紙袋があったか確認した形跡がないこと、③盗まれたことに気づいたのは帰宅途中というが、一方で、Aさんは帰宅した後、念のために自宅内も探したというが、車内から無くなったのなら自宅を探すのは不自然であることなどでした。

しかし、①JAF係員なども、紙袋の中に200万円もする高級時計が入っているとは知りませんので、視界に入っていたとしても、気にしなかったかもしれません。②Aさん自身、何日か前から置いていたとすれば、その日、ことさら意識的に確認しないこともあるでしょう(しかも、運転席の隣のコンソールボックスなので、無意識のうちに確認していた可能性もあるでしょう)。③自宅を探したことについても、大切なものが無くなった場合、念のため、いろいろなところを探すことは、誰だってあるのではないでしょうか。

このように考えると、裁判所の認定はAさんに酷な気もいたしますが、こういう微妙な事実認定は、主張や証拠の出方、法廷でのAさんの態度などに影響されることも少なくないため、何とも言えません(そういうことはあまり判決に書かれません)。素朴に考えますと、大切な時計であれば、自動車を一時的に路上駐車するにしても、ポケットに入れて出るのではないかとも思います。裁判所は、そんなことも考えたのかもしれませんね。

 

他にも、暴漢に襲われて強奪されたと主張するケースについても、被害者の説明する暴行態様に比してケガが軽すぎる、強奪後、直ちに110番をしないで、最寄りの交番まで歩いて行ったのはおかしいなどとして、保険金の支払いを認めなかった事例もあります。

盗難保険をかけている場合であっても、安心は禁物。保険などかけていないかのように十分な管理をするとともに、盗まれたことに気づいたら、即110番ですね。

 

※東京高等裁判所平成8年8月29日判決の事例を元に若干簡素化して作成。